太史慈と孫策で140字お題

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「宛先のない手紙」

魔が差した。あなたに、知られなければ迷惑かけることもなし。
言い訳つけて、想いの丈をつれづれ綴った。
あなたのことを好いています。
こんなにも、あなたに想い焦がれて俺は、
いっぱいいっぱいで。
いっそ、死んでしまえたら。そう思って止みません。
遺書だろうか。
恋文ならば笑えたものを。

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「運命なんて、くそくらえ」

何度も、救えなかった夢をみる。
薄暗闇に浮かぶ横顔に、先の、青白く痩けた影を見た。
それでも、隣にそっと手を忍ばせれば、未だ、温かい手がそこにある。
もう何度目か知れない。
「…また、」
いまもまた、ただ不甲斐無く。
「もしだめだったら、すみません」
時が来るのをひた待つばかりだ。

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「世界で一つだけの願い事」

あなたといられますように、
いま、このまま、このままでいたい、
あなたと、手が、手のひらを、
触れたい、
あなたの、俺が、
先に死にたい、
抱きたい、あなたを、
残さないで、くれ、俺を、
願わくは、
「俺の、俺のための願いをあなたに、悟られませんように。」

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「それは寒い夜だった。」

「抱いてもいいですか。」
そういう趣味はないと言った。
そういう意味ではないと言われた。
寒いのだという。
返事も待たずに腹を抱かれた。
無遠慮な奴だと思った。
首もとの鼻息が気持ち悪いと言えば、後ろで笑っている。
なんにもどうでもよくなった。
お前と、はじめて共寝をした夜だった。

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「未練たらしい」

未だ僅か、温もりの残る寝台に身を寄せ頬を擦る。
敷布を噛み、掠れた声を手繰り寄せひとり、先の真似事を繰り返せば、
また、まだ、熱は孕まれる。
独り寝は慣れている。そのほうが都合の良いことも、あるから。
それでも毎度、去った後のあなたをこそ慰み物にするのは、
たぶん、俺が、

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「共犯者の笑み」

「人を殺しました。」
俺もあなたも、人を殺したのです。
戦ではない、国などない、考えだしたらきりもない、
とうの昔に諦めたそれを何度でも、熱に喘ぐあなたに言い聞かせてやる。
背徳の中でするほうが気持ちがいいのだ。
聞こえていますか。
忘我を彷徨うまなこに問えば、果てるあなたは喉で笑った。

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「黙って泣きやがれ」

こいつの声は嫌いじゃないが相づちうつのもしんどくなった。
桃の木が枝に蕾をつけました、
陽が延びましたよもう春です。
だからなんだと返せば終わる、意味のないことを喋り続ける。
まるで女だ。
「そうそうそれから、」
続けるお前の顔も見ないで吐き捨てるよう言ってやる。
「いいから黙って泣きやがれ。」

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「夢であえたら」

「ちゃんとあなたも歳を食っててくださいよ、」
俺だけ爺さんなんて、いやです。
夢枕で言う声がした。
否、夢ではなかったかもしれない。
あたたかく、沈む背中の心地良い。
乳白色の、まぶたの裏から影を見やれば揺れていて、このまま。
お前の夢となってもいいと、
一瞬、思った。

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「最後は私と」

馬鹿な。
それが叶うならば、どんなにしあわせか。

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「恋して愛して、憎んでる」

惚れていた。
後先すらも考えぬまま慈しむだけの季節は過ぎて、
最早ただ、畜生のように痩けた身体を突き遣るばかりだ。
意味を為す言葉を交わした記憶ももう、ない。
このまま先に死にゆくであろうあなたを許せるはずもなく、俺は、
遣る瀬を求め鳴くことをやめた軋む身体をひたすら抱いた。

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