会話



「死して永久なる非存在へと成っただけのこと、
無限なる死、
それに対すれば生きるものとして存在することなど、一も無い、
たった一瞬間の現象なのだ、
その一瞬間を、終わらせたのだ、
有限なる生、
あの人は、この先にいる」

「わかったようなことを言ってくれるじゃないか」

「不満か」

「多少な」

「変わらんな」

「生前に於ける非存在的存在と死後に於ける非存在的存在、
その在り様に違いはあるかね」

「俺にはわからん」

「考えたまえよ」

「面倒だ」

「考えるまでもなかろう」

「...非存在としての存在が、
可能性としての存在か、結果としての存在か、
の、違いだろう」

「そうだ、後者となってしまってはもう、受け止めるより他は無い」

「そうだろうとも、お互いにな」

「承知している」

「無為なる存在、だ」

「ああ」


非存在なる存在を己が認識として存在させんが為の確認行為である。
それ以上にも以下にも成り得ぬし、他に、意味を持たない。
故に、ただ漫然と、不定期的に繰り返される。


「...行かねば」

「...そうだな」


どうせまた、あうのだろう。

別れ際、僅かに互い向け合う顔に、薄く、
湛えた笑みは自嘲であった。



(会話 / 周瑜と太史慈)